地震

地震(じしん、 : earthquake)という語句は、以下の2つの意味で用いられる [1]

  1. 地震学における定義: 地球表面を構成している岩盤( 地殻)の内部で、固く密着している岩石同士が、 断層と呼ばれる破壊面を境目にして、急激にずれ動くこと。これによって大きな地面の 振動が生じこれを 地震動(じしんどう)という [2]
  2. 大地のゆれ: 地震動のことで一般的にはこちらも「地震」と呼ばれる [2]。「地震」(なゐふる)という語句は『 日本書紀』にも見え、その他 古文書の記録にも登場するが、これらは今日の地震学における地震動のことであり、また「大地震」、「小地震」などと共に 震度の程度を表すものでもあった [3]

地震を対象とした 学問 地震学という。地震学は 地球物理学の一分野であり、 構造地質学と密接に関わっている。

概要

兵庫県南部地震阪神・淡路大震災)によって発生した 野島断層。地震の 震源となった 断層のずれが波及して「地表地震断層」として現れたものである。激しい揺れを起こした断層本体(震源断層、起震断層)とは別のものであり、また地下に存在する断層のほとんどは地表から観察できないので、防災上注意しなければならない。
地震計で観測された地震動のグラフ。

地下の 岩盤には様々な要因により (ひずみ)がかかっており、急激な変形によってこれを解消する現象が地震である。 地球の内部で起こる 地質現象(地質活動)の一種。地震に対して、地殻が非常にゆっくりとずれ動く現象を 地殻変動と呼ぶ。

地震によって変形した 岩石の断面を 断層といい、地下数kmから数十kmの深さにあって地表までは達しないことが多いが、大きな地震の時にはその末端が地表にも現れて地表地震断層となる場合がある。一度断層となった面は強度が低下するため繰り返し地震を引き起こすと考えられている。特に カリフォルニアにある サンアンドレアス断層は1,000km以上に及ぶ長大なもので繰り返し地震を起こしており、日本の 地震学者に地震と断層の結びつきを知らせたことで有名である。日本では 兵庫県南部地震野島断層濃尾地震根尾谷断層北伊豆地震丹那断層などが有名。

地震によって生じる 振動は高速の 地震波となって地中を伝わり、 人間が生活している地表でも 地震動として感じられる。

地震波は の一種であり、地中を伝わる波(実体波)と地表を伝わる波( 表面波)に大別される。実体波はさらに、速度が速い P波(たて波、疎密波)と、速度が遅い S波(横波、ねじれ波)に分けられる [注 1]

地震のはじめに感じられることが多い細かい震動( 初期微動)はP波、地震の激しい震動(主要動)は主にS波による。P波とS波は伝わる速度が違うので、P波とS波の到達時間の差である初期微動の時間 [注 2]震央と観測地点との間の距離に比例する。初期微動が長いほど震源は遠い。初期微動が長くかつ主要動が大きい場合は、震源が遠いにも関わらず 振幅が大きいので、大地震の可能性が考えられる。また、P波はS波よりも速いので、P波を検知したときに 警報を出せば被害が軽減できることから、 緊急地震速報「Jアラーム」や緊急停止システム [注 3]で応用されている。

地下で断層が動いた時、最初に動いた地点を 震源と呼び、地上における震源の真上の地点を 震央と呼ぶ。テレビや新聞などで一般的に使用される震源は震央の位置を示している。震源が動いた後もまわりに面状にずれが生じ、 震源域と呼ばれるずれた部分全体が地震波を発する。

地震波の速度はほぼ一定であり上記のように異種の波がある性質を利用して [注 4] 地震計で地震波を観測することにより、1地点以上の観測で観測地点から震央までの距離 [注 5]、2地点以上の観測で震央の位置、3地点以上の観測で震源の深さを求めることができる。この算出式は 大森房吉が1899年に発表したので、「(震源の) 大森公式」と呼ばれている。このほかに地震を含めた地下の諸現象の解明や、 核実験の監視などに有用であることから世界的に地震観測網が整備されている。日本は地震災害が多いことから地震計や 震度計が数千か所の規模で高密度に設置され、 気象庁による迅速な 地震情報発表や緊急地震速報などに活用されている。

なお、一つの地震の地震波にはいろいろな 周期周波数)の成分が含まれており、その違いによって被害が異なるほか、近隣の地域でも 表層地盤の構造や 建物の大きさ・形状によって揺れ方が大きく異なることが知られている(詳細は 後述参照)。

また地震は、震源の深さによって、浅発地震、稍(やや)深発地震、 深発地震の3つに分類される。前者の境界は60kmまたは70kmとされる場合が多く、後者の境界は200kmまたは300kmとされる場合が多いが、統一した定義はない。震源が深い地震は同じ規模の浅い地震に比べて地表での揺れは小さい。ただし、地下構造の影響により震央から離れた地点で大きく揺れる 異常震域が現れることがある。

このほかに地震を特徴付けるものとして、 発震機構とよばれる断層の動き方( 後述)や地震の大きさなどがある。

地震の大きさ

地震の大きさを表現する指標は主に2系統あり、それぞれいくつかの種類がある。Mは 指数関数、震度は 非線形関数であり、数字の大きさと実際の物理量は 比例関係ではない [注 6](詳細は 後述参照)。

  • マグニチュード (M) [注 7]は地震の規模すなわち断層の大きさ、あるいは地震の際に放出される エネルギーの量を表す指標である。
  • 震度階級(震度)は地表の各地点での揺れの大きさを表す指標である。単に「ある地震の震度」という場合には、その地震における全観測地点の最大震度をいう。

地震活動

比較的大きな地震は、地震活動に時間的・空間的なまとまりがあり、その中で最も規模が大きな地震を 本震と呼ぶ。ただし、本震の区別が容易でない地震もあり、断層のずれの程度や前後に起こる地震の経過、断層の過去の活動などを考慮して判断される。本震に対して、その前に起こるものを 前震、その後に起こるものを 余震という。

被害をもたらすような大地震ではほぼ例外なく余震が発生し、余震により被害が拡大する例も多い。大きな地震であるほど、本震の後に起こる余震の回数・規模が大きくなるが、「 (余震の)改良大森公式」に従って次第に減少する。この公式から余震の発生確率を予測したり、活動度の低下から大きな余震の発生を予測する研究も行われている。余震の発生する範囲は震源域とほぼ重なる。なお、大地震の地殻変動の影響で震源域の外で地震活動が活発になる場合があり、これを 誘発地震という。

本震と呼べるようなひとまわり規模の大きな地震がなく、同規模の地震が多発するものを 群発地震という。また1990年代以降普及した呼称だが、同じ断層で数十年から数万年以上の間隔で繰り返し発生するものを 固有地震(相似地震)といい、大地震と呼ばれるような複数の固有地震が同時または短い間隔で発生(主に隣接する セグメントを破壊)するものを 連動型地震という。

また、地震のメカニズム解明の過程で プレートテクトニクス(動き)との対応関係から地震は4種類に大別されており、それぞれ発生地域、揺れの大きさや被害の傾向が異なる(詳細は 後述参照)。

地震による災害

大きな地震はしばしば 建造物を破壊して 家財を散乱させ、 火災土砂災害などを引き起こし、人的被害をもたらす、典型的な自然 災害の1つである。 地震予知の研究も行われているが、 天気予報のような科学的な予報・予知が確立されておらず、前触れもなく突然やってくる。そのため、建造物や地盤の 強度を調べて補強する、震災時の生活物資を 備蓄する、避難計画を立てるなど、災害に備える「 防災」や災害を軽減する「 減災」の考え方から対策をとり、「いつ来てもいいように」備えるのが一般的である。

また、海域で発生する大規模な地震は 津波を発生させ、震源から遠く揺れを感じなかったところにも災害をもたらすことがある。そのため、学術的な研究などの目的に加えて、津波の発生を速報する目的で、各国の行政機関や大学等によって地震の発生状況が日々監視されている。1960年 チリ地震以降、初めて 太平洋全域の 津波警報システムが整備され、 2004年スマトラ島沖地震以降はその態勢も大きく強化され、 インド洋でも整備されている。

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